大判例

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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和29年(う)264号 判決

記録な検討するに、起訴状掲記の本件公訴事実は、「被告人は、昭和二十九年三月二十六、七日頃婦負郡細入村楡原地内に於て架線しあつた北陸電力株式会社(社長山田昌作)所有、水谷小二郎管理に係る三、二粍硬銅線二十九貫五百匁位(時価二万九千五百円位相当)を窃取したものである。」と言うにあるところ、他方原審第五回公判期日に於て追加された予備的訴因は、「被告人は昭和二十九年三月二十七日午前八時頃婦負郡細入村楡原、楡原駅南方約百米位の道路わき草叢に於て、二十七、八歳位の土方風の男より三、二粍硬銅線二十九貫五百匁位(時価二万九千五百円位相当)を、それが盗品であることの情を知りながら、代金一万五千円位で買受けて、賍物の故買をしたものである。」と言うのであつて、しかも、原判決事実摘示による原審認定の事実は右予備的訴因事実と全く同じであることが明かである。弁護人は、「窃盗と賍物故買とは、犯罪の態様を異にし、その間、所謂基本的事実関係の同一が存在しないから、原審に於ける予備的訴因の追加は、違法不当の措置である。」旨主張するけれども、しかしながら、叙上起訴状掲記の事実と、予備的訴因事実とは、それぞれ被害物件を全く同じうする財産犯罪である点に於て、犯罪の主体、客体、及び罪質に、相共通する要素を備えているものであることが明白であるのみならず、さらに、其の他の点、たとえば、犯罪発生の日時場所等の点に関しても、後者のそれは前者のそれの中に、完全に包摂される表現形式をもつて記載されていることを認め得べく、これ等諸般の点よりすれば、両者は犯罪現象として、根本的な事実関係を同じくするものであると言わざるを得ないから、原審に於ける訴因追加は違法でなく、論旨は探用するを得ない。なお、原判決挙示の証拠、就中、被告人に対する検察官事務取扱検察事務官作成の第一、二、三回各供述調書の記載に依れは、原判示の事実、殊に、被告人が、其の盗品であることの情を知りながら、敢て原判示の如く、土工風の男から原判示物件を買受けたものであつたこと、被告人が買受けた銅線は、行為現場附近に架設してあつた配電線であつて、北陸電力株式会社の所有に係り、買受行為の直前、何人かによつて窃取されたものであつたことを各肯認するに十分である。およそ賍物故買罪の成立を認定せんがためには、取引物件の賍品たることを認定するを要するは、言う迄もないところであるけれども、当該本犯人(例えば窃盗犯人)が何人であるかを先づ認定しなければ、其の賍品に関する賍物故買罪を認定することが出来ないものではない。従つて、原判決挙示の証拠により、窃盗犯人が何人であるかを確認することが出来ないとしても、原審は所論のように、条理又は実験則に違背して事実を認定したものでない。況んや、原判決挙示の証拠によれば、窃盗犯人は故買の相手方、すなわち年齢二十七、八歳の土工風の男であることを認定するに足るに於ておやである。そうしてみれば、この点に関する論旨も理由がない。

(裁判長判事 水上尚信 判事 成智寿朗 判事 沢田哲夫)

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